“ネット”と上手く付き合うために

2010年10月1日 Version 1.4 発行

この版の原書:
http://miau.jp/20101010/LiteracyBook_v1p4_pdf.zip
このHTML版のURL:
http://momdo.s35.xrea.com/web-html-test/mirror/miau/index.html
著者:
一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)

はじめに ―― 先生方・保護者のみなさまへ

今、インターネットや携帯電話から子供たちにもたらされる情報に対して、その危険性が問題となっています。硫化水素による自殺の方法がネットで出回ったり、出会い系サイトが殺人に結びついた事件などがあり、マスコミでもネットを不安視する報道が相次いでいます。

これを受けて、2008年6月の国会で「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」、通称「青少年ネット規制法」が成立しました。この法律については、違法あるいは有害な情報から子供たちを守るという趣旨は理解できます。しかし、インターネットの仕組みを理解していない議員間で立案されたため、成立までには、インターネット事業者や携帯電話業界から大変な反発がありました。

私たち「MIAU(インターネットユーザー協会)」は、この法案の問題点を早くから指摘してきました。それというのも、今の子供たちの生活から携帯やインターネットを取り上げることは、情報教育という面では後退であると考えるからです。また、インターネットの利用が悪いことであるかのように扱われることにも違和感があります。

●子供にとって「インターネット」とは●

多くの教師や保護者にとってインターネットとは、パソコンを使ってアクセスするウェブサイトがイメージされることでしょう。しかし現代の子供たちにとって、インターネットとは携帯電話から閲覧できる世界、すなわち携帯サイトや携帯メールなどを指します。

文部科学省が2008年に行った「子どもの携帯電話等の利用に関する調査」では、全国平均で中学2年生の45.9%、高校2年生の95.9%が携帯電話を所有しています。中高生の多くは、生徒個人が所有する携帯電話によってネットに接続しているのです。

とくに都市圏では、それ以外の地域に比べて、子供たちの携帯電話所有率が高くなる傾向にあります。東京のある私立中学校では、2009年入学時の調査で、入学時に女子の92%、男子でも84%がすでに携帯電話を所有していました。都市部およびその近郊では、私立中学校受験のために小学生のうちから塾に通わせる家庭が多く、それをきっかけに保護者が携帯電話を持たせているようです。

子供とインターネットの議論は、もはやパソコンではなく、携帯電話を基本に考える必要があります。

●子供たちのためにできること●

子供たちがインターネットの違法あるいは有害な情報に惑わされないようにするために、どのようなことができるのでしょうか。そもそも携帯電話やパソコンを与えないというのも1つの方法でしょうが、すでに多くの子供たちがそういった機器を所有している以上、今さら取り上げるというのも難しいでしょう。

インターネットには、有用な情報もたくさんあります。また将来を左右するような人物と出会う場所でもあり、自分の隠れた才能を開花させる土壌でもあります。子供たちをインターネットや携帯から遠ざけようとするのではなく、インターネットの良い面を残しつつ、有害情報に惑わされないようにすることが大切です。

そのために私たちができることには、大きく分けて次の3つの方法があります。

  1. フィルタリング
  2. ペアレンタルコントロール
  3. 情報リテラシー教育

1.フィルタリング

青少年ネット規制法に関する議論で注目を集めたのが、「フィルタリング」という手法です。これは携帯ネットやインターネットから、特定の情報だけを遮断する仕組みです。ドリップ式のコーヒーメーカーで使用する“紙のフィルター”を想像していただければわかりやすいでしょう。飲むときに邪魔になる豆はフィルターで遮断したまま、必要な成分だけを取り出すことができます。

フィルタリングの難しい点は、どの情報が有用でどんな情報が有害なのか、子供の成長過程や置かれている環境、また性別によっても変わってくることです。そのため、パソコンでインターネットをフィルタリングするソフトウェアでは、年齢別に有害情報の種類を分けたり、遮断できる情報を保護者が選択できるなどの機能が豊富なものもあります。

一方、携帯ネットのフィルタリングでは、キャリア(docomo、au、SoftBankなど)がそれぞれ提供していますが、個別の事情を汲んで細かく設定することはできません。

またフィルタリングの抜本的な問題として、有害な情報のみを見せなくすることができず、そのほかの有用な情報まで一緒に遮断してしまう可能性があります。フィルタリング機能を提供している会社自身も、「フィルタリングは不完全な技術である」と認めています。フィルタリングに全面的に頼るのではなく、他の方法と複合的に組み合わせるべきです。

フィルタリングは、機械的に機能するため、子供が保護者との対話を拒む第二次反抗期には、有用な仕組みです。しかし子供たちにとってはフィルタリングされているということがストレスとなり、その不満が保護者に向けられる可能性もあるため、運用には十分な観察が必要です。思春期を過ぎて大人への階段を上り始めた時期には、このような技術のみに頼るのではなく、子供との対話で動向を把握したり、情報リテラシー教育に比重を置くべきです。

2.ペアレンタルコントロール

欧米で広く取り入れられているのが、「ペアレンタルコントロール」という手法です。これはパソコンやインターネット環境などは親が与えたものであり、子供がそれらを使うのは親の監視下のみ、という考え方に基づいています。この方法は、小学生や第二次反抗期を迎える前の中学生あたりまでは、有効な方法です。

具体的には、パソコンを使うときには親が一緒に見ているという人的方法と、子供がどんなサイトに行き、どんな発言・行動をしたかというデータを取っておいて、あとで検証する機械的方法があります。後者はパソコンやインターネットに対しての高度な知識が必要になるため、日本ではあまり一般的ではありません。

また携帯電話の場合は、どこでも場所を選ばず利用できること、画面が小さく、保護者も一緒に見ることが難しいことから、あまり積極的に実行されていないのが実情です。

3.情報リテラシー教育

有害な情報を機械的に遮断してしまうのではなく、その情報はなぜ有害なのか、有害な情報に接したときにはどのように対処すべきかを教えることが、情報リテラシー教育です。子供の情報管理能力や、悪意のある情報に対する耐性を高めることがその目的です。また、自分の軽率な行動がどれだけ社会に大きな影響を与えるかを前もって教えておくことで、ネットでのいじめや掲示板のいたずら書きこみを抑制することが期待されます。

現在のカリキュラムでは、高校の「情報」の授業で「情報リテラシー」を扱っています。しかしインターネットや携帯電話は中学生(早くは小学生)から使いはじめる子供も多く、高校で学ぶのは遅いという批判が、子供たち自身からも上がっていました。そこで平成24(2012)年度からの新しい学習指導要領では、中学校の「技術・家庭」の授業で情報リテラシー教育を行なうことになっています。その代わり高校では、情報リテラシーは中学で学習済みとして、深く扱わないようになります。

●この教材について●

新しい学習指導要領が平成24年度から施行されるとはいえ、それまでの期間、現実に子供たちと対峙しなければならない学校にとっては、教材の不足や先生方の負担が大きな問題となります。そこで私たちMIAUはこれらの問題をカバーするために、学校の授業の中で利用していただけるような、コンパクトな教材を作成することにしました。

各セクションは、学校の1時限の中で余裕を持って扱える分量にわけて構成しています。技術的に詳しくない先生方にも、ロングホームルームなどで活用していただけるよう、なるべく技術用語を避けて平易な言葉で記述してあります。

また学校での利用だけでなく、家庭内での情報教育の指針として保護者の方にも参考にしていただければ幸いです。

●ライセンスについて●

本教材は、クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons)ライセンスの「表示―継承」(by-sa)の条件で配布しています。原著作者としてMIAUの名前を表示する限り、無償で複製・配布したり、これを元に新しい教材を作ることができます。ただしその教材は、これと同じライセンスにする必要があります。

詳しくは「NPO 法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」のウェブサイトを参照してください。http://www.creativecommons.jp/

1 ネットは匿名ではありません

ネットは匿名の世界だとよく言われています。たとえばインターネットや携帯サイトの掲示板に書きこみをするとき、名前を名乗らなければ自分は見つからない、と思っている人が多いようです。

しかし、それは大きな間違いです。

●ネットでは自分を隠して発言する人がいます●

インターネットや携帯サイトの掲示板を見ていると、自分の名前を隠した匿名の書きこみをよく見かけます。掲示板では、書きこみの内容のほかには、書きこんだ人の名前と、書きこんだ時間くらいしかわかりません。ですから、みんなが同じ名前を使って書きこめば、一見すると誰が書いたのかわからなくなります。このように、自分がだれなのかを明らかにしないことを「匿名」といいます。

この「匿名」を利用して、いろいろなひどいことをする人がいます。たとえば、いたずらで人殺しの予告をする人がいます。また、人を傷つけるようなうそをついたり、他人に知られたくない秘密を勝手にばらしてしまう人がいます。みなさんも、掲示板やブログ、ゲストブックなどで、だれかの(もしかしたら自分の)悪口が書かれているのを見たことがあるのではないでしょうか。

一方、メールでは、送信者のメールアドレスが必ず表示されます。ですから、匿名ではないと思われるかもしれません。しかし送信者の情報は、他の人のメールアドレスにすり替えることができます。送信者のメールアドレスをいつわって、メールを送信することを「なりすまし」と呼びます。迷惑メールの多くも、「なりすまし」たメールアドレスから送られてきます。

実際にあった話ですが、自分のクラスの同級生全員から「うざい」というメールを送られた中学生がいたそうです。その生徒は、怖くて学校に行けなくなってしまいました。しかしよく調べてみると、実はたった1人の生徒が、クラス全員のメールアドレスを使ってメールを送っていた、というのが真相でした。

このように「なりすまし」は、本当の送信者をわからなくするという意味では、匿名に近いものだといえるでしょう。

ギュゲスの指輪

「むかしむかし、羊飼いのギュゲスは、地震で開いた穴の中で不思議な指輪を見つけました。指輪を身につけると、自分が透明になって他のだれからも見えなくなってしまうことに気づいたのです。ギュゲスは宮殿に忍びこむと王さまを殺し、自分が王さまになって王国を乗っ取ってしまいました。」

このお話は、今から2400年ほど昔にギリシャの哲学者プラトンによって書かれた『国家』という哲学書の一節です。このお話は、「だれにもとがめられないような力を手に入れてしまったら、どんな人でも悪い行いの誘惑に勝てないのではないか?」という素朴な疑問を、今も私たちに投げかけています。

最近では、ネット上の「匿名」という仕組みはこの「ギュゲスの指輪」にあたるのではないか、という考えられるようになってきました。透明人間になって悪事を働いたギュゲスのように、匿名ならば自分の正体がバレることはなく、ネット上で何をやっても自分が責任を問われることはない、だから悪いことをしてもいいんだ、そんなふうに錯覚している人が増えてしまったからです。相手には自分が書いているとわからないと思えば、ついつい気が大きくなり、実際に面と向かってはとても言えないようなひどいことを書きこんだり、いやがらせをしたりしてしまうということもあるでしょう。

しかし、「自分がやったとわからなければ何をしてもいい」ということはありません。哲学者プラトンは、「不正なことをすべきではないのは、その結果が他人にばれてしまうからではない。その人の魂が病気になってしまうからである。」と述べています。もし「魂が病気になろうが、自分さえすっきりすればそれでいいんだ」と考える人が増えれば、社会はどんどん悪くなって、最後にはいつもおたがいのことを疑っていなければならなくなります。そうなれば、みんなで「ギュゲスの指輪」である匿名を、捨てなければならなくなってしまうでしょう。

匿名には良い面もあります。名前を出さないことで、立場にしばられず、自らの率直な意見を自由に発表できます。また、それによって犯罪が明るみに出たり、犯罪を未然に防ぐこともあります。それは、私たちの社会にとってとても大事なことです。ですから、匿名による発言の自由と、無責任を履き違えてはいけません。もしあなたが友達の悪口や、だれかをおとしいれるためのうそ、ましてや犯罪の予告などを、自分以外の人も目にするところに書きこめば、その責任を取らせるためにネット上の人があらゆる手段を使って、あなたを探し出します。悪いことをした責任は、大人も子供も関係なく、自分で取らなければなりません。

●名前を隠してもログを見ればわかります●

「匿名なら自分は安全」。「匿名なら自分が責任を問われることはない」。そう思いこんでしまうのは、大きな間違いです。ネットでは、現実の社会よりはるかに簡単に、個人を特定することができるのです。

みなさんがネットの掲示板を読み書きしたり、ブログやサイトを見たりすると、読み書きした先のコンピュータに、いつどこから見にきたのかという記録が残ります。この記録を「ログ」と言います。インターネットの技術に詳しい人がこのログを見れば、どこのコンピュータや携帯電話から書きこんだのかわかります。

たとえ「匿名掲示板」を名乗っているサイトでも、必ずログは記録しています。こういう記録は、普通なら公開されませんが、書きこみで被害を受けた人が訴え出たり、警察からの要請があれば、掲示板の運営会社などはログを提出しなくてはなりません。これは「プロバイダ責任制限法」という法律で定められています。

多くの人が共同で使うパソコン、たとえば学校や図書館、あるいはネットカフェやパソコン販売店などに設置してあるパソコンから書きこめば、だれが書きこんだのか見つからないだろうと思う人もいるようです。しかしこういう方法を使っても、どこからいつ書きこまれたかは、ログを見ればすぐわかってしまいます。

また公共の場所やお店では、犯罪防止のために、誰が使ったのかを常に監視カメラで記録しています。携帯電話販売店のお試し用の携帯電話を使って、犯行予告のいたずらをした人がいましたが、ログの情報と監視カメラの映像を組み合わせて、次の日にはもう逮捕されたという事件がありました。

メールの場合はさらに簡単で、どこからどんなルートを通って届いたかが、メールの「ヘッダー」といわれる部分に付け足されています。ヘッダーは、インターネットメールなら簡単に見ることができますし、携帯メールでも設定を変えたりすれば見られるようになります。

ひとたび問題になれば、みなさんが思っている以上に、記録からあなたを追跡して特定するのは簡単なのです。実世界の犯罪よりも、ネット上でのいたずらのほうが、記録が豊富に残っている分だけ、特定しやすいといってもよいでしょう。

用語解説

ネット
本書では、パソコン用のウェブサイトや携帯サイトなど、インターネット技術を応用した広い意味でのネット社会全般を指します。
インターネット
インターネットには、さまざまな技術を使ったサービスが存在しますが、ここでは一般的にパソコンなどを使ってアクセスできるウェブサイトという意味で使っています。
携帯サイト
ここでは、携帯電話でアクセスするサイトのことを指します。しかし最近の携帯電話は、パソコン用のサイトも閲覧できる機能を持っており、次第にその区別が曖昧になっていく傾向にあります。逆に携帯電話専用のサイトやサービスは、パソコンからのアクセスを遮断するところが増えており、独自の社会性を持つ傾向にあります。
プロバイダ責任制限法
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」といい、2002年5月27日に施行されました。
ヘッダー
docomoとauでは、携帯からの設定変更で見ることができます。SoftBankは、電話で申請すればパソコンで確認できます。Willcomでは、一部の多機能端末(W-ZERO3など)では標準で表示できますが、それ以外の端末では表示する方法がありません。

2 メール、つらくなってない?

いつもメールを確認していないと落ちつかない、メールの着信音が鳴らないと不安になる、そんな気持ちに心当たりはありませんか?もしかすると「メール依存症」になってしまっているのかもしれません。

●「メール依存症」ってなに?●

「依存症」とは、ある特定の飲食品や趣味などを大好きな人が、ハマり過ぎてしまい、逆にやっていないときに不安になったり、イライラしてしまうことです。そうなると、学校や家庭での生活にまで悪影響が出てしまいます。「アルコール依存症」や「薬物中毒」といった言葉を知っている方もいるでしょう。

依存症は、アルコールや薬物のような“もの”だけでなく、“行為”に対しても起きます。たとえば、ギャンブルが止められなかったり、どうしてもTVを見つづけてしまうような依存症もあります。韓国での実話ですが、ネットゲームにハマった子供が、食事もとらずにずっとゲームをし続けて、ついに死んでしまったという事件が起きています。

携帯メールは楽しく便利ですが、それゆえに、ギャンブルやゲームと同じように、依存症を引き起こす可能性があります。友だちとのメールに夢中になるあまり、勉強が手につかないということはありませんか?食事中でもケータイが手放せなくなっていませんか?

「依存症」のこわいところは、自分ではなかなか気づきにくいことです。また、一度なってしまうと、なかなか元にもどることができません。あなたも、自分では気づかない間に「メール依存症」になっているかもしれません。

●メールのせいでやるべきことができない●

携帯メールのおかげで、どんな場所でも友だちに連絡したり、何気ないことを言い合ったりできます。もはや、わたしたちの暮らしになくてはならない便利な道具です。しかし、何事も「やり過ぎ」はよくありません。携帯メールばかりをやり過ぎて、普段の生活で本来やらなくてはいけないことが後回しになっていませんか?

勉強、部屋の掃除、食事、おふろ、テレビを見たり本を読んだりといったこともふくめて、わたしたちの生活は自分で意識している以上に「やらなければならないこと」に満ちています。携帯メールもそのひとつに入れてもいいでしょうが、携帯メールばかりを集中してやっていると、ほかの「やらなければならないこと」をやる時間まで、メールにとられてしまいます。

食事中に携帯をいじっていて保護者におこられたり、寝ねる時間をけずってまでメールをしなければならなくなった人もいることでしょう。さらに宿題をする時間もなくなり、今度は学校でもおこられることになります。友だちと会っておしゃべりしていても、別の友だちからのメールに気を取られて目の前の友達が不機嫌になってしまったことはありませんか。こういったことが重なると、1日の時間がうまく使えなくなり、次第に体調も、そして心も不安定になっていきます。

友だちと携帯メールをやりとりしてはいけないわけではありません。ですが、毎日やらなければならないことのバランスが取れるくらいの頻度で、節度を持って携帯メールと付き合うことが大切なのです。

●メールが来ないと不安になる●

こちらからメールを送ったとき、数分以内に返事が来ないと落ち着かなくなったり、逆に腹を立てたりする人はいませんか?

毎日、携帯メールを大量にやり取りすることが当たり前になっていくと、「メールは自分の返信で終わりにしなきゃ」という気持ちにとらわれていつまでも続けてしまったり、「返信がおそいやつは“使えない”」といったような相手を悪くいう考えが生まれやすくなります。

また自分に届くメールが少なくなると、「自分はもしかして友だちからきらわれたのではないか」「友だちがみんなでわたしを“シカト”してるんじゃないか」と不安に思い、夜でも寝ねられなくなったり、イライラしやすくなったりします。

それは携帯メールを「やり過ぎ」てしまったために、正しい感覚がマヒしてしまっている可能性があります。本章末の付録の「携帯メールやり過ぎ度チェック」を使って、自分の「やり過ぎ度」を計ってみましょう。そして「メール依存症から脱出する5つのステップ」を読んでください。

●メールを終わらせよう●

携帯メールをつい「やり過ぎ」てしまう人には、2種類のタイプがあると言われています。1つは仲のよい友だちが多く、友だちと遊ぶことが多い人。もう1つはたくさんの友だちと面と向かって話すことが苦手で、しゃべるかわりに携帯メールをたくさん出すという人です。

どちらのタイプの人も、友だちと携帯メールをおたがいに送信しあっているうちに、やり取りが止まらなくなって、ついつい1日で何十通、ときには何百通もの携帯メールをやり取りしてしまうことになるのです。

やり取りの最中に「もういい加減、メールを終わりたいのに、なかなかきっかけがつかめない」と思いながらも続けるということもあるでしょう。それが知らず知らずのうちに精神的な負担になり、運動もしてないのにつかれやすくなったり、突然不安になったりします。

友だちとのメールのやり取りが止まらなくなったときに、ちょっとでも「めんどうくさい」と感じたら、それは「黄信号」です。「赤」になる前にやり取りをやめることが、携帯メールを使うときに最も重要なことなのです。

●「ベストエフォート」で行こう●

みなさんは携帯メールを送ると、すぐさま間違いなく相手に届くと思っていることでしょう。しかしそれは、ネットを形作っているいろいろな会社が努力して、なるべくおくれないようにしているからです。あまり知られていませんが、実はメールを初めとするインターネットの通信は「できるだけがんばってみるけど、もしかしたらダメかもしれない」という思想で作られています。

たとえばメールアドレスを打ち間違えてしまい、メールが相手に届かないでもどってきた経験はないでしょうか。これは、「できるだけがんばって相手を探してみたけど、適当なところであきらめて帰ってきた」という結果なのです。もしこれが妥協することなく、いつまでもメールアドレスを探し回る仕組みだったら、人間のちょっとしたミスのために、メールを届けるために世界中のコンピュータが永遠にあてどなく動き続けることになってしまいます。これは大変な無駄ですから、適当なところで探すのをやめているのです。

このような「ダメかもしれないけどできるだけがんばってみる」という考え方を、「最大限の努力」という意味で「ベストエフォート」といいます。インターネットの技術では、ベストエフォートが基本です。ネットワークのどこかで調子が悪いところがあれば、メールが届くのがおくれたり、届かないこともあります。もともとメールとはその程度のものなのです。

メールの返事も、そんなふうに考えてみてはどうでしょう。自分の使える時間の中で、できるだけの努力をする。できなければ、明日会ったときに話をする。それぐらいの気持ちでメールと付き合うことで、友達や親、学校との関係も、スムーズになります。みなさんが大人になるころにはまた違っているかもしれませんが、今の世の中は、携帯メールが人との付き合い方の中心にはなっておらず、むしろ「あとから割りこんできたもの」なのです。

携帯メールの中での人付き合いと、実際に会う人との付き合い方のバランスやルールは、みなさんの世代がこれから作り上げていくものです。相手を思いやり、限られた時間の中でどうすれば両方の付き合いがうまくいくのか、みなさんも今のうちから考えてみてください。

自転車で携帯を使わないで

最近、自転車に乗りながら携帯メールをしている人をよく見かけます。でも、これは大変危険な行為なので、絶対にやってはいけません。

自転車の事故は中学生や高校生が一番多く、その中でもここ数年事故が起きる原因の多くは「携帯電話を使いながら運転したことによる前方不注意」と言われています。かべにぶつかって自分がケガをするだけでなく、歩行者とぶつかって相手が骨折する事件や、車に気づかずはねられて死亡するという痛ましい事故も実際に起きています。

あまり知られていませんが、携帯電話を使用しながら自転車を運転するのは、法律に違反するのです。歩行者と衝突事故を起こした場合、逮捕されたり、罰金をはらわなければならないこともあります。自分の命を守るためにも、他人に迷惑をかけないためにも、絶対に自転車運転中は携帯を使わないようにしましょう。

用語解説

ネットゲーム
インターネット上でプレイするゲームのことです。複数のプレイヤーがネットワークを介して、協力しながら進めていくロールプレイングゲームが主流です。本文に挙げた「食事を取らないで死んでしまった」という韓国の例については、韓国では日本より早くブロードバンドが普及したこともあり、ネットゲームがたいへん盛んだという背景もあります。
自転車運転中の携帯電話の利用
平成11年の道路交通法改正により、自転車運転中の携帯電話使用が禁止されました。これに違反し、道路交通の危険を生じさせた場合は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
ミニブログ
「メール依存症から脱出する5つのステップ」の最後で紹介している、ネットの新しいサービスです。特定の相手宛ではない独り言のようなつぶやきを公開するサービスですが、1つ1つの発言に字数制限があるため、込み入った話になりにくいという特徴があります。代表的なサービスは「ツイッター(http://twitter.com/)」ですが、携帯ブラウザやメールから利用できるサービスもあります。

携帯メールやり過ぎ度チェック

次のなかで自分にあてはまる項目がいくつあるか数えてみましょう。

さあ、自分にあてはまる項目はいくつあったでしょう?何個あてはまったかで、自分の「やり過ぎ度」がわかります。

0 個だった人
あなたのやり過ぎ度は「ゼロ」レベルです。そもそも携帯電話やメールに、あまり関心がないのかもしれません。だからといって異常ではありませんので安心してください。
1 〜 6 個だった人
あなたのやり過ぎ度は「普通」レベルです。今のペースならまだ心配するようなことはありませんが、これ以上レベルが上がらないように注意しましょう。
7 〜 13 個だった人
あなたのやり過ぎ度は「やや注意」レベルです。おそらく保護者の方は、今のあなたを少し心配しはじめています。メールのやりとりだけに気を取られず、目の前の人との会話を楽しみましょう。
14 〜 19 個だった人
あなたのやり過ぎ度は「警告」レベルです。メールにかかりっきりになっている姿が、すでにまわりの人からは変に見えはじめています。保護者の方たちは、今のあなたをかなり心配しています。
20 個以上だった人
あなたのやり過ぎ度は「重症」レベルです。すでに普段の生活にも支障をきたしているはずです。自分で気をつけて改善していかないと、本当の病気になってしまうかもしれません。

■メール依存症から脱出する5つのステップ

いくら水泳が好きだからといって、24時間ずっと泳ぎ続けられる人はいません。泳いでいる途中でつかれてしまい、おぼれてしまうからです。携帯メールも同じこと。メールのやり過ぎでおぼれてしまう前に、適度なところで「陸」に上がって、ゆっくり休むようにしましょう。

とくに「携帯メールやり過ぎ度チェック」の結果が「やや注意」以上だった人は、今までの携帯電話の使い方を見直す必要があります。次の5つのステップで、メール依存症から脱出しましょう。

ステップ1 おたがいの「時間」を尊重しよう

メールは、電話やチャットのように2人が同時に会話できる手段ではありません。文章を入力する分だけ、やり取りに時間がかかります。電話ならば5分で済む話が、メールでおたがいに1通ずつやり取りすると、30分くらいかかってしまうこともあります。

わたしたちの生きている時間には限りがあります。1日24時間のうち、8時間前後は寝ていますし、10時間前後は行き帰りをふくめた学校での時間で終わります。残り6時間のうち、1時間は食事、1時間はおふろや身支度だと考えると、個人が平日に自由に使える時間は、4時間前後ということになります。この4時間の中で勉強や宿題もやらなければいけませんし、さらにテレビを見たり、本を読んだり、音楽を聞いたりしているわけです。そんなときにとりとめもなく携帯メールのやり取りばかりしていると自分の時間だけでなく、相手の自由になる時間も、知らず知らずのうちにうばっているのです。

余計なメールのやり取りを半分にするだけで、相手が自由になる時間が1時間増えるかもしれません。話すことがたくさんあるときは、時間がたくさんある土日にして、平日は軽めのメールくらいにしておくのもよいでしょう。まずは、「相手のことを本当に大事にしているからこそメールを減らす」と考えることから始めましょう。

ステップ2 終りにできないときは「今の時間」をメールで報告

深夜、メールのやり取りをしていてなかなか「終わり」を切り出せないときにオススメなのが、今の時間をメールで報告することです。「あ、もう○時なんだ」というような感じでメールを送れば、そのあと「夜もおそいし今日はそろそろ寝ねる?」というやり取りを終わらせる話題にしやすいのではないでしょうか。

「11時になったね」というように、毎時0分に時報を真似てメールで報告するというのもひとつの手です。時間を話題にするよう普段から心がければ、いつのまにか時間が過ぎていることに気づかないということも、少なくなるでしょう。

ステップ3 午後10時以降はマナーモードに

メールが届くことが気になって仕方がないという人は、思いきって午後10時以降(または寝る前2時間)はマナーモードにして、メールの着信に気づきにくくするというのも、よい方法です。

夜中のメールは、ついだらだらと続きがち。気がつくとベッドの中に入ってもやり取りが続き、十分な睡眠が取れないなんてことも起きてしまいます。最初から友だちに「午後10時以降はメールはしないように言われている」といって、夜届いたメールは翌日の朝や、登下校中などにゆっくり返信した方が、時間もムダなく使えます。深夜のメールをやめるだけで、携帯メールにまつわるさまざまな問題や、不安を解消することができるでしょう。

ステップ4 「続きは明日にしよう」が言える勇気

携帯メールのやり取りをしていて「自分の返信で終わらせたい」と思う人は多いようです。ですが、もともとメールは、相手に文字でわかりやすく用件を伝えるための手段ですから、用件が済んでいれば、自分の返信で終わらなくても、相手に「失礼」になるということはありません。どうせ1対1なのですから、自分が最後になる確率は1/2しかないのです。それよりも、今特に話さなくてもいい話題のときに話を切り上げて、「続きは明日にしようか」と相手にメールできる勇気を持ちましょう。

ステップ5 メール以外のネットのサービスも使ってみる

だれかと話したいわけじゃなく、単に今の自分の状態や、思っていることをただ聞いてもらいたいと思ったときに、だれかれ構わず携帯メールを送っている人はいないでしょうか。そういう「対話」を目的としないメールは、返信が来たときにどうしてもだらだらと無目的に続くメールになりがちです。

どうしても自分が今思っていることを、だれかにただ聞いてもらいたい。そういうときはメールではなく、ブログやSNSのようなサービスを利用して、定期的に日記を書いてみるのもいいかもしれません。また最近では、ひとことふたことつぶやき合うだけのミニブログという手軽なサービスもあります。

多くの人から見られる場所で自分の思っていることを書くことで、まったく知らない人から思いも寄らぬ反応が返ってきたり、他人の違う考え方を知って自分の考えを深めることもできます。メールのように返事を期待しないぶん、書き方も書く内容も自由です。目的によって道具を上手く使い分けましょう。

3 ネットの情報はだれのもの?

ネット上には、掲示板やブログ、ホームページ(ホムペ)、プロフィールサイト(プロフ)、SNSなど、自分の意見を発表する場がたくさんあります。またコメント欄やメッセージ機能など、本来のサービスにくっついた形で意見を述べる機能もあります。これらはだれに対して発信され、だれに読まれるものなのでしょうか。また、発言した内容は、読む人にどのような影響を与えるのでしょうか。

●情報の公開って何だろう?●

掲示板に書き込みをしたり、プロフにコメントを書いたり、メールを送ったりと、ネットにはいろいろな使い方があります。実はこのネット上でやり取りされる情報は、大きく2つに分類することができます。「公開される情報」と「公開されない情報」です。

例えば、学校や企業、市役所や美術館などのウェブサイトは、世界中のだれもが見たり読んだり聞いたりすることができます。こういうものが「公開される情報」です。一方、ネットショッピングの届け先として入力した自分の家の住所や、そのウェブサイトを利用するために入力したパスワードといった情報は、「公開されない情報」です。そしてあなたの友だちや保護者など、特定の個人にあてて送るメールやメッセージも、「公開されない情報」です。

では、ネット上の掲示板やブログ、ホムペ、プロフなどに入力した情報は、どちらに分類されるのでしょうか。これらは「公開される情報」になります。

「公開される情報」に、“こっそり”や“ヒミツ”や“ここだけの話”はありません。ブログやプロフを見る人がそれほど多くなかったとしても、検索サイトなどを使えば、世界中のだれもがそこにたどり着くことができます。相手にはわからないと思って書いた悪口も、相手が探し当てて読むことは十分にあり得るのです。

問題3-1

次のうち、「公開される情報」に出して良いものはどれでしょう?

●他人のメールアドレスはだれのもの?●

自分が知っている情報は、自分の判断で自由に他人に教えてもいいものでしょうか。あなたが持っている情報は、「あなただけのもの」ではないかもしれません。

問題3-2

Aくんは、ある日友だちのBくんから「Cくんの新しいメールアドレス教えてよ」と言われて、教えてあげました。しかし、翌日Cくんから、「何でBにアドレス教えたんだ!」と怒られてしまいました。

CくんとBくんは友だちでしたが、しばらく前にケンカをしてしまったのです。「もうBくんからのメールを受け取りたくない」と思ったCくんは、メールアドレスを変更して、Aくんを含む一部の友だちだけに新しいアドレスを教えていました。

しかし、Aくんがメールアドレスを教えてしまったことで、またBくんからCくんに、メールが送られてくるようになったのです。

  1. Bくんから「メールアドレス教えてよ」と言われたときに、Aくんはどうすれば良かったのだと思いますか?
  2. 友だちのメールアドレスを、本人以外に聞くことについて、どう思いますか?
  3. どのような状況なら、ほかの人のメールアドレスを、本人に断りなく教えてもいいと思いますか?

知らないうちに自分のメールアドレスが出回ってしまうと、いつの間にか欲しくもない広告のメールが届いたり、連絡を絶ちたい人からもメールが届いてしまいます。反対に友だちのメールアドレスならと気軽に教えている人もいるかもしれませんが、他人にメールアドレスを悪用されれば、その友だちがもめ事や犯罪に巻き込こまれる可能性もあるのです。自分の携帯電話やパソコンの中に情報があるからといって、それは「自分のもの」ではありません。

メールの一斉送信に潜むワナ

メールには、複数の相手に同じ文面を一斉に送信できる機能があります。一斉送信されたメールを受け取った側は、だれとだれにメールを送ったのか、メールアドレスも含めて知ることができます。お互い連絡先を知っている友人に一斉送信する場合は問題ないのですが、お互いに接点のない人たちに一斉送信すると、メールアドレスが知らないうちに流出してしまうことになります。

例えば、自分の誕生会を開く連絡メールを、塾の友だちと部活の友だちに一斉送信したとします。塾の友だちと部活の友だちはお互いを知りませんが、送られた友だちはそれぞれ知らない人のメールアドレスを、メールの「宛先」欄を見ることで知ることができるのです。

一斉送信機能では、本人にその気がなくても、他人のメールアドレスを多くの人にばらまいてしまうことになりかねません。一斉送信のような機能を使うときは、お互いに連絡先を知り合っているグループごとに分けて連絡するか、送信した相手の連絡先が表示されない「BCC」というメールの機能を利用しましょう。

●ネットの書き込みは消えない?●

ネットに書き込こんだ情報は、消してしまえばなくなる、と思っていませんか? ネットに書き込むということは、実はそれほど単純なことではないのです。

問題3-3

Aさんは、友だちのBさんに誘われて、ケータイのプロフで自分のページを作成しました。Aさんは、Bさんや他の友だちに見せるつもりで、本名や、学校のクラス、自分の住所、そして、友人のBさんやCさんと一緒に撮った写真を載せました。また、BさんやCさんと遊んだりしたことについてブログを書きはじめ、そのブログへのリンクをプロフに載せました。

数日後、Cさんから恥ずかしいから自分の写真を公開するのはやめてほしいと言われたので、Aさんは公開していた写真を削除しました。しかし写真を削除してから数日後、C さんのところには、Aさんが公開した写真とCさんの最近の出来事を書いたメールが、知らないだれかから送られてきたのです……。

  1. プロフの写真を削除したのに、なぜこのようなことが起きてしまったのでしょうか?
  2. Aさんはどのようにすれば良かったのだと思いますか?
  3. あなたはプロフを作るとき、何に気をつければよいと思いますか?

「情報の公開って何だろう?」でも学んだとおり、ネットのサービスを利用すると、友だちにだけ見せるつもりでも、だれもが見られるようになっていることがよくあります。プロフなどは、友だちや、友だちの友だちくらいの人に見せるつもりで作っているかもしれませんが、実際には担任の先生や保護者をはじめ、全然知らない他人までもがチェックしている可能性は、常にあります。

そしてだれもが見ているということは、だれもがその情報をコピーして別の場所に掲載したり、保存することができるということです。例えばプロフに掲載した写真は、ケータイでは保存できなくても、パソコンを使えば簡単に保存できます。だれにでも見られてよいわけではない写真を、だれかが別のサイトに勝手にはり付けるかもしれません。

こうして一度公開された情報は、いろいろな場所にコピーを残しつつ、広がっていくことがあります。たとえ自分のプロフの写真を消したとしても、他の人のパソコンに保存された写真まで消すことはできませんし、どこかにはり付けられた写真を、あなたが削除することはできません。一度ネットに書き込こんだ情報を取り戻すことは、現実的にはほぼ不可能なのです。

多くの人に知らせるつもりのない情報を誤って公開してしまった場合は、二度とやり直しはできないのでしょうか。実際には、必ずしもそうではありません。正直に自分が間違ってしまったことを認め、今後はやらないと謝罪し、発言を取り消すと宣言すれば、事態が収まる可能性は高まります。ただしこの場合でも、いったん伝わった情報が消えてなくなるわけではありません。

●何を書き、どう伝えるか●

実際にみんながいる前で自分の考えを発表することは、大変勇気のいることです。それに比べてホムペやプロフに書くのは、自分の気持ちに素直になれる、本音が言えると感じる人は多いようです。人が何を考え、何を感じるのかはまったく自由ですし、それを表明する自由があるのが、インターネットの特徴です。

ですが、自分の考えを広く伝えたとたん、あなたが言ったことには「責任」が生まれます。広く伝えるつもりはなくても、インターネットに書いて公開するということ自体が、広く伝えるということと同じなのです。

例えば、「私は○○さんが嫌い」と思うことは自由ですが、それをネットに書いて公開してしまうと、その情報は多くの人に伝えられます。遅かれ早かれ、その○○さんにもその情報は伝わるでしょう。そうなると○○さんも、あなたのことが嫌いとやりかえすかもしれません。そしてそのやりとりは、あなたと○○さんの友だち全員が知ることになります。

これを、「自分がそう思ったのだから仕方がない」と割り切れるでしょうか。おそらくこれによって起こるトラブルは、あなたが想像した以上に多くの人を巻き込こみ、関係する全員にとって辛い体験になるでしょう。

ここで重要なのは、「自分の気持ちに正直である」ことと、「思ったことは何でもネットに書いていい」こととは違うということです。信用できる友だちに秘密を打ち明けることと同じ感覚で、サイトに書き込こんでいませんか?いま自分が書き込こんだものが、「公開される情報」なのか「公開されない情報」なのかを理解すること、その発言によって、どれぐらいの人が影響を受けるのかを意識して、発言内容を自分でコントロールする必要があります。

ネットサービスの種類と公開範囲の違い一覧表

サービス 項目 具体的な内容(例) 公開範囲 削除
SNS系

代表例:
 モバゲータウン、
 GREEなど

※一部には、SNSと
名乗っていても、公
開範囲がホムペ同様
のものもあります。

プロフィール名前、年齢、住んでる場所、自己紹介、趣味など会員限定簡単
マイルーム住所、アバター、アイテムなど会員限定簡単
日記日記会員限定簡単
アルバム登録した写メ会員限定簡単
ブクマお気に入りのホームページ自分だけ簡単
ミニメ個人宛のメッセージ自分と相手だけ難しい
友だちリスト友だち登録した人たち会員限定難しい
あしあと自分のページを訪れた人会員限定難しい
サークル掲示板、イベントなどサークル限定難しい
ホムペ系

代表例:
 @ peps!、
 魔法のiらんど
 など

ページ自由記載だれでも簡単
プロフィール名前、年齢、住んでいる場所、自己紹介、趣味などだれでも簡単
掲示板地域掲示板、趣味掲示板などだれでも難しい
アルバム音声、動画、写真などだれでも簡単
日記日記だれでも簡単
私書箱個人宛のメッセージ自分と相手だけ難しい
ブックケータイ小説などだれでも難しい
アンケートアンケートだれでも簡単
チャットチャットルームだれでも難しい
プロフ

代表例:
 前略プロフィール、
 チェキ!プロフィール
 など

プロフィール名前、年齢、住んでる場所、自己紹介、趣味、リンクなどだれでも簡単
写真・動画自画像、写メ、動画などだれでも簡単
ミニブログ

代表例:
 りある、
 Decoo など

プロフィール名前、自己紹介、趣味などだれでも簡単
デコメ日記日記、画像、デコメなどだれでも簡単
コメント日記に対するコメントだれでも簡単

※ 項目の呼び方や具体的な内容、公開範囲はサービスによって異なることがあります。

●用語解説

ネット
インターネットの略称。本書では、パソコン用のウェブサイトやケータイサイトなど、インターネット技術を応用した広い意味での情報社会全般を指します。
ブログ
個人や団体によって日々更新される、インターネット上の記事掲示方式。従来型の「ホームページ」では、表示制御用のHTML というタグ言語をユーザー側で表記しなければならなかったのに対し、ブログでは通常の文章を記述するだけで綺麗にレイアウトされるため、手軽で見栄えの良い情報発信が可能になりました。
SNS
ソーシャル・ネットワーク・サービスの略。だれでも情報を見ることができるのがインターネットの基本ですが、SNS は会員登録を行い、限定された会員間のみで情報発信や閲覧を行います。「ともだち」として認め合った関係のみの情報共有も可能で、広く周知されるべきではない、プライベートなコミュニケーションも可能。代表的なサービスとしては、mixiがあります。
プロフィールサイト
自分をアピールするためのプロフィールを登録することで、自己紹介や共通の趣味の友だちを捜すための手助けをするケータイサービス。一時期、子どもたちが個人情報を自ら流してしまい、トラブルに巻き込まれる例もありましたが、リテラシー教育や事業者のパトロールにより、状況は改善されつつあります。
ホムペ
ケータイにおける「ホームページ」提供サービス。ブログの日記要素やプロフの自己紹介要素など、複数の要素を併せ持っており、利用中の複数サービスの中心として利用される場合もあります。
ハンドルネーム
インターネット上のみで流通する、個人のニックネーム。本名を名乗る必要のないサービスでは、自分の好きなニックネームを名乗ってコミュニケーションするのが普通です。
BCC
同報メールの仕組みの1つで、ブラインド・カーボン・コピーの略。CC(カーボン・コピー)が全員のメールアドレスまで見えるように送信するのに対し、BCCではだれに同時に送ったのかは受信者に通知されません。

4 ネットでの議論のしかた

人間が一生のうちに出会える人には、限りがあります。しかし現代では、交通網の発達、電話の発明、そしてインターネットの登場によって、昔の人からは想像もできないほどの多くの人たちと出会えるようになっています。そして多くの人と出会えるからこそ、自分の考えとは異なる意見を理解したり、お互いの意見を調整する能力が必要になってきます。

●ネットで意見をやり取りするときのポイント●

ブログやプロフのコメント欄、SNSなどを使えば、遠く離れた人や、実際に会ったことのない人とも相談をしたり、意見をやり取りすることができます。しかし自分と他の人とが、常に同じ意見であるとは限りません。

「好き」や「嫌い」といった好みの問題では、お互いの価値観を認めて、相手の意見を尊重する必要があります。しかしそれでも、ケンカやもめ事に巻き込こまれることもあるでしょう。ネット上の多くのもめ事の原因は、ネット特有の意味の取り違えであったり、気持ちを誤解していたなどといった、ささいなことから起こります。

問題4-1

以下は、あるゲームの攻略情報を交換する掲示板でのやりとりです。書き込みをした人たちの問題点について、話し合ってみましょう。

ゆった:西の洞くつの地下7階のとびらのかぎってどこにあるんですか?
奏:地下3階の魔法使いを5体倒すと出てくる宝箱の中に入ってるよ。
ゆった:さっそく試してみたんだけど、宝箱が出てこないみたいですが。
タケ:奏の情報は間違い。ちゃんと調べてから書けよ。
奏:友だちから聞いたことを教えただけなのに、そんなえらそうな口調で書くことないじゃないですか。
タケ:間違ってたのに、よくそんな言い方ができるよな。
ゆった:で、結局、どうやったらかぎは手に入るんですか……。
  1. 奏とタケは、なぜケンカしてしまったのでしょう。
  2. 掲示板などで知らない人と情報交換や会話をして、よかったこと、失敗したことはありますか。

ネットでのトラブルを防ぐために、掲示板などの書き込こみには、次のようなポイントに注意するとよいでしょう。

1. 確かな情報を書き込む。

うわさ話や想像の話など、不確かな情報をもとにしていては、いつまでも正しい結論にたどり着くことはできません。また自分が有利なようにうその情報を書き込こむと、やりとりしている相手だけではなく、結果的にそれを見ている多くの人をだましてしまうおそれもあります。新聞社のニュースサイト、企業の公式サイトなど、信頼のおける情報源を調べて、正確だと自信を持てることがらを書き込こむようにしましょう。

2. 時間差があることをふまえる。

あなたが書き込こんだ意見を、みんながその場で見ているとは限りません。したがって、他の人に質問や提案をしたときでも、すぐに返答がこないこともあります。人の事情や都合を無視して、答えをせかしたり、一方的に決めてしまったりするべきではありません。

3. 丁寧な言葉で書き込む。

文字だけでやり取りをするネット上の会話では、書き込こんだ人の気持ちや、「どんなつもりなのか」まではなかなか伝わりません。気軽に話をするつもりでくだけた言葉づかいで書き込こんだとしても、相手には怒っているかのような印象を与え、感情的なやり取りに発展するかもしれません。相手がどういう人なのかがよくわからないときは、常に丁寧な言葉づかいを心がけましょう。

4. 感情的な返答をしない。

ネット上の会話では、他の書き込こみをしている人の気持ちを意識することも重要です。たとえ、乱暴な言葉での書き込こみであっても、書いた人が必ずしも怒っているとは限りません。そのような返答を受け取ったときには、落ち着いてまずは「怒らせてしまいましたか?」とたずねるなど、相手の発言の意味や意図を確認しましょう。

ネットの世界では、自分の思っていることが伝わらない!?

みなさんは、実際に目の前で相手と話をしているときと、メールや掲示板など「文字だけ」でやり取りするときでは、どちらがもめ事が起きやすいと思いますか?

人は実際に会って話をしているとき、言葉を使って「内容」を伝えることに加えて、身ぶりや手ぶり、表情、しぐさ、声の調子など、言葉以外の要素で自分の「感情」を伝えています。言葉で伝える部分と言葉以外で伝える部分は、それぞれに大きな役割があり、両方が揃っていれば、あまり誤解なく話を進めることができます。

一方、文字だけのやりとりでは、言葉を使った「内容」しか伝わりません。これは自分が「伝えたい」と思っていること全体の、3割程度しかないと言われています。つまり、メールやネットでの会話のように、文字だけでやり取りをする場合、表情やしぐさのような言葉以外の要素で伝わっていた「感情」が抜け落ちてしまうため、誤解を招きやすくなるのです。

文字だけのやり取りで相手に誤解されないようにするには、「なぜ自分はそう思ったのか」という理由を書くなど、できるだけ言葉を尽くす必要があります。

では、言葉を尽くすとはどういうことでしょうか。例えば、何かをほめたり、けなしたりするときに「○○は本当におもしろい(つまらない)」と書くのではなく、「自分はもともと△△のようなものが好き(嫌い)なので、○○も好き(嫌い)」という書き方をすると、それを読む人に自分の価値観(自分にとって何が大事で何が大事でないかということ)を理解してもらうことができます。

自分だけがわかっているような書き方ではなく、読む人のことを考えて、自分の考えや持っている情報をできるだけたくさん書いてあげること。これが「3割しか伝わらない」ネットの世界で、感情の行き違いを減らすコツなのです。

●「議論」って何だろう?●

みなさんは議論をすることを、口げんかをするようなイメージで考えていませんか?議論の本来の目的は、ある問題に対して違う意見を持つ人たち同士が集まって、お互いが納得できる解決策を探すことですから、口げんかとはまったく違ちがいます。みなさんもホームルームや生徒会などで、実際に相手と対面して議論をしたことはあるでしょう。今後はそれに加えて、ネットを使った議論のやり方というのも、覚えておく必要があります。

ネット上での議論が難しいのは、相手がどういう人なのかをよく知らないことがあり、さらに文章からは相手の感情がうまく読み取れないので、書かれた文章の本当の意味が伝わりにくいことが挙げられます。そこで、いくつかのルールが必要になってきます。

1.「 意見を言う」と「意見を聞く」のバランスをとる。

自分の主張ばかりを述べているだけでは、相手も納得できる結論にたどり着くことはできません。相手が発言する機会を、意識して作ってあげる必要があります。

2. 主張には、相手を納得させる裏付けが必要。

議論の場での発言は、何を言ってもかまいません。ですが、その主張には、相手が納得できるだけの理由が必要です。こう感じた、だけでなく、なぜそう感じたのかの理由までふまえて発言すると、より説得力が生まれます。相手もよく知っていて、納得しやすい例を挙げるといった工夫も、効果的です。

3. 納得できない意見に対しては、反論ではなく質問をする。

相手の意見に対して反論したくなるのは、相手の意見に納得できない部分があるからです。その納得できない部分を相手に解説してもらえるよう、質問をします。質問されたほうは、相手に納得してもらえるように工夫して、説明しなければなりません。相手の意見を取り消させたり、発言を禁止する権利は、だれも持っていません。もし、相手がそのような攻撃的な態度をとり続けるようなら、それ以上議論としては先へ進めませんので、相手が落ち着いてこちらの意見を聞くことができるようになるまで、しばらく時間を空けるとよいでしょう。

4. お互いが納得できる解決策を考える。

お互いの主張に納得できたら、次はお互いが納得できる問題の解決方法を考えます。相手の意見にも納得したのであれば、自分の主張が100%通るとは思わないでしょうし、まったく新しい解決策を、お互いが協力して生み出すこともできるでしょう。その解決策は、自分たちが実行可能なプランであることも重要です。

5. 結論が自分の思い通りにならなくても、負けではない。

議論においては、相手を完全に説得できれば自分の主張通りの結論となることもありますが、ほとんどの場合、結論はお互いの主張の中間になります。自分の主張どおりにならなかった、また相手の主張のほうが多く通ったからといって、相手に負けたことにはなりません。お互いが実行可能な解決策が見つかり、問題が解決できたことに、議論の成果があります。

5 自分の権利・他人の権利

ネット上には文章や写真、映像や音楽といったたくさんの作品が公開されてます。みなさんは、それを自由に見たり聞いたり、ときには保存することもできます。こういった作品は、いろいろな人がネットのあちこちに転載し、どんどん広まっていきます。作品を作る人にとっては、たくさんの人に見たり聞いたりしてもらえるチャンスが大きく増えたと言えるでしょう。しかし、無料で提供されている作品ばかりではありません。

●「著作権」ってなんでしょう?●

自分の考えや感情を表現するために作られた作品を「著作物」といいます。著作物には、例えば詩や小説のように文字で表わしたもの、楽器の演奏や歌のように音で表わしたもの、絵や写真のように映像で表したものなど、さまざまな表現があります。

そういった著作物を作った人を「著作者」といいます。著作者は、自分が作った著作物を自由に売ることができますし、複製(コピー)して無料で配ることもできます。

しかし、自分が作ったものをだれかが無断で売っていたり、勝手にコピーされたり、そっくり真似されたりすると困ります。そういうことをさせないための権利が「著作権」です。著作権は「著作権法」という法律で守られています。

著作権は、著作者がプロでもアマチュアでも区別しません。著作物が有料か無料かでも区別しません。著作物を作ったひとにはだれでも、その著作物の著作権があります。著作者の許可がなくては、著作物を売ったりコピーしたり、そのほかいろいろな使い方はできません。

みなさんにも身近なマンガを例に、著作権についてもう少しくわしく考えてみましょう。マンガは著作物で、著作者はマンガ家です。マンガ家は画家とはちがって、自分が描いた絵そのものを売るわけではありません。みなさんが本屋やコンビニで買っているマンガ本は、印刷された複製(コピー)です。つまり、マンガ家は複製(コピー)を売って収入を得ています。

マンガの複製(コピー)、つまりマンガ本を作るのは出版社です。複製(コピー)を作ることも著作権のひとつで、「複製権」といいます。これも著作権法で守られているので、どの出版社でも勝手にマンガ本を作っていいわけではありません。著作者であるマンガ家が許可した、特定の出版社だけがマンガ本を作ることができるのです。

もう一つ、みなさんにも身近な音楽で考えてみましょう。音楽の場合はもう少し複雑です。音楽では、作詞家と作曲家が著作者です。しかし、詞と曲だけでは音楽になりません。歌う人や演奏する人が必要です。それを録音して、CD として複製(コピー)したものを買ったりレンタルして、みなさんは聞くことができます。

このとき演奏する人(実演家といいます)やCD を作る会社(レコード製作者といいます)のように、著作者を手助けする人や会社が持っている権利を「著作隣接権」といいます。ほかにも、テレビ番組ではテレビ局が著作隣接権を持っています。

●どうして勝手にコピーしてはいけないのでしょう?●

前の節で説明したように、著作物を複製(コピー)してマンガ本やCD を作ることができるのは、その作品の著作権を持っている著作者が認めた出版社やレコード会社だけです。しかし、パソコンとインターネットが広く使われるようになるにつれて、みなさんのような一般の利用者の行動が問題になってきました。

パソコンの能力が向上してきた現在では、文章でもイラストでも音楽でも、さらには映像作品でさえも、取りこんでデジタル化することができます。最近では作るときにもパソコンを使って、最初からデジタルで作られる作品もめずらしくなくなってきました。

デジタル化された著作物は、パソコンやケータイを使って、簡単にコピーすることができます。しかし、だれもが勝手にコピーを作ってしまうと、複製(コピー)を売って商売をしている出版社やレコード会社は、作品が売れなくなって困ってしまいます。また著作者や実演家(歌手や演奏者)も、収入が減って困ってしまいます。

例えば、みなさんが買ったCD をパソコンでコピーして、そのCD を買おうとしていた別の人にあげてしまったとします。本来なら2人が買うはずだったCD なのに、お金は1人分しか支払われていません。売り上げが半分になってしまいました。

ましてや、そのコピーをネットにアップロードして、だれでもダウンロードできるようにしてしまうと、大勢の人たちが勝手にコピーすることになります。パソコンとインターネットのおかげで、作品をコピーしたりアップロードすることは簡単になりました。しかし、著作物を売って生活している人にとっては、たいへん困ることになります。

しかし、まったくコピーできなくなると、著作物を楽しむことが不便になります。例えば、CDの音楽を携帯音楽プレイヤーに転送することや、テレビ番組をレコーダーに録画することも著作物の複製(コピー)です。もし、そういったことまでできなくなると、携帯音楽プレイヤーで聞く音楽は必ず有料ダウンロードしなければなりませんし、放送している時間にテレビの前にいなければ好きな番組を見ることもできません。

著作権法では、個人で楽しむならコピーしてもよいという範囲が認められています。自分で買ったCD の音楽を携帯音楽プレイヤーにコピーしたり、テレビ番組を録画することはこの範囲に入るので、多くの人が行っています。

問題5-1

あなたが買ったCD の音楽をコピーしてあげていいのは、だれまでだと思いますか?

コピーさせないデジタル技術

デジタル化された作品は、コピーしやすいのが特徴です。手間もかからず、品質が落ちることもありません。しかし、あまり簡単にコピーできてしまうと、勝手にたくさん配られてしまって、商売が成り立たなくなるのではないか、と心配する人たちもいます。

そのために考えられたのが、デジタルデータを簡単にコピーさせない技術です。これを「DRM(Digital Rights Management、デジタル著作権管理)」といいます。例えば、買ってきたDVD をパソコンで単純にコピーしても、映像として再生することはできません。また、ケータイでダウンロードした「着うた」も、コピーしてだれかにあげることはできないようになっています。

一方で、DRM が利用者の自由をうばっていることもあります。他人に配ったり売ったりするのではなく、自分で使うためにコピーしようとしても、DRM がかかっていればできません。禁止する技術には必ず対抗する技術が生まれるものですから、DRM を回避してコピーを作ることもできなくはないでしょう。しかし、日本の著作権法では、コピーさせない技術を回避してコピーを作ることは違法だとされています。

作った人に「コピーさせたくない」という意志があるのならば、無理矢理こじ開けるべきではありません。それよりも、みんなが「著作物のコピーをばらまくとだれかが困る」ということを理解すれば、DRM はいらなくなるのです。そのほうがいい世界だとは思いませんか?

●オリジナルの作品はどうやってできるのでしょう?●

著作者が作品を作るために必要なことはなんでしょう? いろいろなことに感動したり、美しい風景を見て心を豊かにすればいいのでしょうか。

確かにそれも必要なことですが、他の人が作った作品をたくさん見たり読んだり聞いたりすることも大切です。そして、先人がどのような手法を使っているのか、どういう手順で作るのか、人を感激させるポイントがどこにあるのかを参考にします。つまり、勉強やスポーツなどと同じように、作品を作るにも練習が必要なのです。

他人の作品を参考にすると、最初はどうしても真似になります。しかし、他人の作品を自分で本物そっくりにコピーしてみただけでは、自分の作品とは言えません。学んだ手法や手順で、自分で考えた別のものを作ったとき、初めて自分のオリジナル作品と呼べるものになります。

自分が作った作品でも、参考にした人の影響が強く表れていると、人の真似だと批判されます。どれぐらい似ていなければ、真似ではないと言えるのでしょうか? これは本当に考え方が人それぞれで、結論は出ていません。作品が真似られたといって裁判もおきていますが、裁判所でも判断がいろいろにゆれ動いています。

一方、もともとオリジナルではない著作物というものもあります。例えば、小説を原作としたマンガや、マンガがもとになった映画やテレビドラマなどは、みなさんもよく見かけるでしょう。このように、ある著作物を原作として生まれた著作物のことを、「二次的著作物」といいます。二次的著作物を作るときには、原作者の了解を得て、契約を結び、利用料をはらいます。初回作が好評なために続編が作られたような作品も、二次的著作物の一種です。

また、他人の著作物を部分的に「引用」することも、著作権法で認められています。これは何かを説明する文章で、他の人の言葉をそのまま使った方がわかりやすい場合などに使われます。ただし、自分の主張が主で引用が従であることや、どこが引用部分なのかをわかりやすくすることなど、引用にはいくつかのルールが決められています。

問題5-2

教科書やニュース記事などの中から、「引用」にあたる部分を探して、書き出してみましょう。

●インターネット時代の新しい著作権の考え方●

デジタル技術は、わたしたちが著作物を楽しむ環境を大きく変えています。しかし現在の著作権法の仕組みは、「どうして勝手にコピーしてはいけないのでしょう?」の節で見たように、みなさんたちデジタル世代の使い方までふくめて、完全には対応できていません。

そんな窮屈な著作権の仕組みを解きほぐし、著作物を楽しむことができる人を増やしたり、個人が作品を作ることに貢献しようという動きも、世界中で広まってきています。その代表的な動きが「クリエイティブ・コモンズ」です。

クリエイティブ・コモンズは、「だれかが作品を作ったときに、あらかじめ“ この作品はこのような使い方をしてもいいよ” ということを決めておく仕組み」です。クリエイティブ・コモンズは「法律」ではありません。作品を作った人が、その利用範囲 を「宣言」しておくことで、法的なトラブルを減らす仕組みです。

自分が作った作品をどこまで自由に利用していいかは、作った人によって考え方がちがいます。クリエイティブ・コモンズでは、作った人の考え方が尊重されるように、表5-1の4つの条件を組み合わせることで、ルールにはばを持たせています。

アイコンを組み合わせて表示することで、自分が作った作品を他人がどのように利用していいのかを宣言することができます。条件に従えば、利用者が著作物を自由にコピーしたり、二次的著作物を作ることができます。

クリエイティブ・コモンズは、だれでも自由に利用できる作品を増やすことで「著作権が怖くて他人の作品を使えない」ということを打破し、多くの人が「他人の作品を真似ることから創作を行う」ことを手助けするものです。だれかの作品が安全に利用できるだけで、多くの人が根源的に持っている「作品を作りたい」という欲求を刺激することができるのです。

クリエイティブ・コモンズの動きは、世界中で広まっており、音楽や写真、文章、動画など、たくさんの著作物がクリエイティブ・コモンズで自由に利用できるようになっています。

表5-1 クリエイティブ・コモンズの表示

アイコン意味説明
表示作り手の名前を適切に表示すること
非営利お金もうけはダメ(許可を取ればOK)
改変禁止元の作品を作り変えないこと
継承元の作品と同じクリエイティブ・コモンズで発表すること

6 自分を守る・他人を守る

携帯電話やパソコンで電子メールを使っていると、見ず知らずのアドレスから、たのんでもいない広告メールが一方的に、大量に送られてくることがあります。このような迷惑メールにどう対処するかは頭の痛い問題で、電子メールが普及しはじめてからずっと利用者をなやませています。

●知らないアドレスからの広告メールはネットの迷惑●

迷惑メールは、受け取った人にとって迷惑なだけでなく、ネット全体にとっても通信量が増えて、大きな負担になっています。近年は法律でも規制されていますが、法律に違反してでも迷惑メールを送りつける悪質な業者は後を絶たず、残念ながら根絶にはほど遠い状況です。

問題6-1

  1. みんなからきらわれ、法律で規制されているにもかかわらず、迷惑メールを送る人がいなくならないのはどうしてだと思いますか?
  2. 迷惑メールを受け取ったら、どのように対応すればいいでしょう?

●メールアドレスがぬすまれたのでしょうか?●

迷惑メールは1 件受信すると、あっという間に1日に数十通も届くようになってしまいます。もしかしたら知らない間にメールアドレスがぬすまれたのかもしれない、と疑う人もいるかもしれません。しかし実際には、迷惑メールの業者に、自分からメールアドレスを教えてしまっているケースもかなりあるのです。

例えば、無料ゲームやクーポンがもらえる懸賞に応募するために、空からメールをどこかへ送信したことはありませんか? もちろん空からメールで応募するからといって、すべてが悪徳業者ではありません。しかし、クーポンの配布や無料会員の登録、プレゼントの応募などを装って、みなさん自身からメールアドレスや氏名・住所などを聞き出そうとする迷惑メール業者がいるのです。

空メールを送信する前に、信頼できるところから入手した情報かどうか、送信先はよく知っている会社かどうか、そして自分にとって本当に必要なサービスやプレゼントなのかをよく考えてください。空メールを送るだけなのに、やけに「お得」なキャンペーンなど、ちょっとでも「おかしい」と感じたら送信しないほうがいいでしょう。

●メールフィルターを活用しましょう●

迷惑メールの対策を考えてみましょう。

簡単な対策として「メールフィルター」があります。これは迷惑メールを、見る前に処分してくれる機能です。例えば、アドレス帳に登録していない相手からのメールは受け取りをすべて拒否したり、メールアドレスの一部が一致するなどの条件を満たしたメールを自動的に削除したり、迷惑メールとしてふり分けたりできます。

メールフィルターは、携帯電話のメールでも利用できます。具体的な機能や設定方法は、利用している携帯電話会社ごとに異なります。設定を間ま違ちがえてしまうと、必要なメールまで迷惑メールと判断されてしまいますので、よくわからないときは保護者の方に設定してもらいましょう。

また、迷惑メールを個別に携帯電話会社に報告して、そのアドレスからのメールを止めてもらうこともできます。

メールフィルターは確かに便利ですが、すべての迷惑メールを完全に防ぐことができるわけではありません。メールフィルターを用いても迷惑メールがなくならないときには、メールアドレスを変えることも一つの解決方法です。

問題6-2

あなたが受け取るメールのうち、必要なメールは残しつつ、迷惑メールだけをうまく取り除くには、どのような条件を設定すればよいでしょう?条件を考えてみましょう。

●ワンクリック詐欺にだまされない●

迷惑メールをうっかり開いてしまい、本文に書かれていたリンクをクリックするうちに、高額な利用料金を請求する画面がいきなり表示されることがあるかもしれません。

あなたは当社のサイトを利用したので有料会員に登録されました。指定の利用料金を支払われなければ所定の違約金を請求することはもちろん、裁判などの強硬手段に出ます。

このように実際に利用したわけでもないサイトの高額な料金を請求する詐欺を、「架空請求」といいます。リンクを1 回クリックしただけで請求画面が表示されるので、「ワンクリック詐欺」とも呼ばれます。

このような架空請求のサイトに迷いこんでしまったときには、どのように対応すればよいのでしょうか?

まず、たとえ請求画面が表示されても、有料のサイトだと分かった上で入会したのでなければ、お金をはらう必要はありません。「裁判」「違約金(延滞料)」といった表現もありますが、それはあなたをあわてさせてお金をはらわせたり、携帯電話番号や氏名・住所などを聞き出すことが目的です。

中には、携帯電話機の「個体識別番号」(パソコンの場合なら「IP アドレス」)によって利用者を特定できるかのように見せかけて、脅しをかけてくる悪質なサイトもあります。しかし実際には、利用者自身が書き込まない限り、架空請求業者が個人情報を取得することはできません。架空請求に対しては、絶対に返事をせず、そのまま無視してください。

どうしても心配な場合には、その時の様子を細かく書き留めておきます。いつ会員登録をしたのか、会員登録時にどのような画面が表示されたのか、具体的な金額が表示された画面で「承認」をクリックしたことがあるかなどを、冷静に思い出してください。請求時のメールなどが残っていれば、迷惑メールだということを証明するために必要なので、気持ち悪いかもしれませんが、消さないで保存しておきます。

そして、念のために保護者の方に事情を話した上で、最寄りの消費生活センターに相談するとよいでしょう。

ID を共有するのはやめましょう

ホムペやプロフなどを、仲の良い友だち数人と共同で開設したことはありませんか? みんなで共同で書きこめば盛り上がる、と思ってしまいがちです。しかし、同じID を何人かで使い回すことには、多くの危険がひそんでいます。

ID とパスワードは仲間だけの秘密だからと安心しているかもしれませんが、ちょっとしたケンカでだれかがパスワードを変えてしまったら、他の人はもうアクセスできなくなってしまいます。事実上の「乗っ取り」です。また、だれかのミスでパスワードが変えられてしまったりすると、だれもアクセスできなくなってしまいます。

だれかがID とパスワードをうっかりネット上に流してしまったら、知らない人が入ってくるかもしれません。何人かで同じID を使用していると、「そのとき本当に書きこんだひとはだれか?」という重要な情報がわからなくなります。知らない人があなたのふりをして書きこんだとしても、まったくわかりません。

こういうトラブルは、大人でも起こしてしまうものです。政治家や有名人のID は、本人だけでなく管理するスタッフでも書きこめるようになっていることがあります。ある政治家のスタッフは、ちょっと席を外した際にそこにいた他のひとに携帯を使われてしまい、その政治家本人が言うはずもない発言を書きこまれてしまいました。

そもそもネット上で書きこみできるサービスでは、ID を共有するという使い方は想定されていません。他人のいたずらであっても、最初にID を登録した人の責任になってしまいます。家族や仲の良い友だちであっても、ID は共有しないようにしましょう。

問題6-3

掲示板に書きこんだのがだれなのかが本当にわからなくなってしまった場合、どのような状態になると思いますか? またどのような問題が起こると思いますか?

●チェーンメールがやってきた●

チェーンメールとは、「このメールを10人に送ってください。」などと書かれたメールです。古くは「不幸の手紙」とも呼ばれていて、郵便を使ったいたずらでした。今は、電子メールに形を変えています。

チェーンメールは、受け取った人が困ったり、不安がったり、パニックになったりする姿を見て喜ぶ、悪質ないたずらです。以前は怖い話が中心でしたが、最近では「このメールを回すと幸せになります」と書かれたものもあります。また「子犬を助けてください」というように、人の善意につけこむものもあります。

よくあるチェーンメールには、次のようなパターンがあります。

なぜチェーンメールはいけないのでしょうか。まず、チェーンメールに書かれている内容が、本当のことかどうかわかりません。仮に最初は本当だったとしても、たくさんの人に転送される間に、おもしろ半分にウソの内容に書き換えられることもあるでしょう。さらに話をふくらませて、より怖い話をでっち上げる人もいるかもしれません。

メールは、中身を読まなければ用件がわかりません。そのため、受け取った人は、知りたくもない情報を無理矢理読まされることになります。いやな気分になるでしょう。そして、本当かどうかもわからない内容のメールを、何も考えずに送ってきたあなたを信用しなくなるかもしれません。

たとえ、そのメールを回すことが良いことのように書かれているメールであっても、何も考えずに転送するということは、自分もそのいたずらの仲間に加わったということになるのです。

また、チェーンメールという方法の危うさも知っておく必要があります。

チェーンメールに書かれている内容は、もしかしたら本当のことだったり、また善意から始まったことだったり、あるいは悪気のない笑い話だったりするかもしれません。

しかし、その内容を広めるために、チェーンメールという方法を使ってしまうと、必ずしも情報が正しく伝わるとは限らないのです。そればかりか、短時間のうちにものすごい勢いで広がってしまうので、結果的に大量のウソをばらまくことになってしまいます。

チェーンメールは、1人が何人にも情報を広めてしまうので、メールの総数がとても多くなります。たとえばチェーンメールを受け取った人が、10分間に5人の人に必ず転送するとしましょう。すると、10分で5人、20分で30人(最初の5人+次の25人)……といった具合に広まっていき、90分後には約250万人に、2時間後には約3億人にメールが転送される計算になります。

「このメールを転送してください。」というのが、チェーンメール独特の手法です。「転送してください」というメールを受け取っても、何も考えずに友達に転送してはいけません。まずその内容が本当かどうかを、よく考えてみます。

受け取ったメールの内容が本当かどうか自分で判断ができないときには、保護者や先生など大人の意見を聞いてみましょう。

自分で調べられる人は、本文の一節(たとえば人の名前や地名などを含む文章)をインターネットで検索してみるのもいいでしょう。同じメールを受け取った人がいれば、これはチェーンメールだよ、と報告しているはずです。

また、あなたが知った本当のことでも、「今すぐだれかに転送してください」といったチェーンメールの方法で人に伝えてはいけません。

チェーンメールは、あなたの知らないところで限りなく広がり続けます。もし、その情報が間違いだったり、もう必要なくなったので転送を止めたいと思っても、もう直したり止めたりする手段はありません。

「間違いでした」というメールをもう一度流せばいい、と考える人もいるでしょう。しかし、自分が間違ったわけでもないのに、わざわざ「前の情報は間違いでした」と人に伝えてくれる人はそれほど多くありません。

おそらく「間違いでした」というメールは、最初のメールほどには広がらないでしょう。結果的に、間違った情報だけが残り、そのままどんどん広がっていくことになります。

用語解説

迷惑メール
受信者の同意を得ないで無差別かつ大量に送信される広告メールのこと。スパム(spam)メールともいいます。
空メール
題名や本文を書かないメールのこと。メール配信の登録やキャンペーンの応募などに広く利用されています。送るだけでこちらのメールアドレスを伝えることになってしまうため、後になって迷惑メールが届く原因となる可能性もあります。
個体識別番号

個々の携帯電話機ごとに、携帯電話会社が他と重複しない形で割りふっている番号のこと。NTT ドコモでは「i モードID」、au では「EZ 番号(サブスクライバID)」、ソフトバンクでは「端末シリアル番号」と呼ばれています。これらの番号は、サイトの「かんたんログイン」機能(IDとパスワードを入力しないでもログインできる機能)などに利用されています。

個体識別番号の中には、個人情報はありません。しかし一方で、機種変更や解約をしない限り変わらない固定の番号であるため、例えばこの個体識別番号とセットになった氏名・住所などが知られてしまった場合、携帯からサイトにアクセスしただけで、利用者がだれかを特定できるのではないかとも言われています。

IP アドレス
コンピュータ間のデータ(パケット)を送受信する機器を判別するための、識別番号のこと。通常、パソコンやルータなどのネットワーク機器をインターネットに接続すると、インターネットサービスプロバイダ(ISP) に割りふられているIP アドレスの中の一つが、ネットワーク機器に割り当てられます。しかしたとえIP アドレスが特定されたとしても、そこからはサービスプロバイダ名や地域名(都道府県名)などがわかる程度で、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどを特定することはできません。
消費生活センター
商品やサービスなど、消費生活全般に関する苦情や問合せなどの窓口となる機関。都道府県ごとに設置されており、専門の相談員が消費者からの相談に乗ってくれます。